トマス・ウルフという作家は大柄の大食いで、
この人が食事について書くと朝食からパーティ並に食物がどどんと並ぶ。 これは本当に美味そうである。 たとえば― 朝一家が目をさますと、家には朝食の料理の匂いがあふれていて、 彼らが座る湯気の立つ食卓には、脳味噌、卵、ハム、熱い丸パン、ねばねばのシロップに浸かってじゅうじゅう言っている揚げリンゴ、蜂蜜、金色に溶けたバター、フライドステーキ、火傷するほど熱いコーヒーが載っていた。 あるいは、パンケーキが山と積まれ、ラム色の糖蜜、かぐわしいソーセージ、ボウルに盛った濡れたサクランボ、プラム、分厚く汁気の多いベーコン、ジャム。 昼の食事もたっぷり食べた。 巨大な牛のロースト、バターをつけた太いライマビーン、湯気を立てている柔らかい軸付きトウモロコシ、板みたいに分厚くスライスしたトマト、ごわごわの美味しいホウレン草、 熱い黄色のコーンブレッド、薄く剥がれる丸パン、深皿で焼いた桃とリンゴのシナモンパイ、 みずみずしいキャベツ、深いガラス皿に積み上げた砂糖漬けフルーツ(サクランボ、梨、桃)。 夜にはポークチョップ、若鶏のフライなどを食べた。 トマス・ウルフ「天使よ、故郷を見よ」(1929)のギャント一家の食卓の描写。 朝からすごい迫力である。 息子は父に指でお腹を押されても凹まなくなるまで食べねばならない。 「『ここが柔らかいぞ』と父は声を張り上げ、幼い息子が綺麗に食べつくした皿に、 またしてもビーフをどっさり盛るのだった」。 (柴田元幸著「つまみ食い文学食堂」より)
by foodscene
| 2009-02-11 01:34
| アメリカ
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