その前に朝ご飯を食べてと、
美佳子は原岡をダイニングテーブルへと座らせる。
やがてスクランブルエッグにマフィン、サラダ、
熱々のカフェ・オ・レといったものが並べられる。
マフィンは手作りで焼きたてであった。
「美佳子は料理がうまいんだね。驚いたよ」
「私ね、学生時代にちょっと、お菓子とパンづくりを習っていたことがあるの。
このあたりはおいしいパン屋さんがないから、
自分で焼かなくっちゃと思っていたの。
でも焼いたのは今日が初めてよ。
マフィンだから、パンともいえないものだけど」
「すっごくおいしいよ。美佳子はきっと...」
きっといい奥さんになるよ、という言葉を大慌てで呑み込む。
林真理子「ミスキャスト」