「これからは毎日、このぐらいの時間に昼ごはんにしましょうよ」
かあさんが答える。 「火と明かりの節約もあるし、日が短くなってきたから、3食とるだけでも時間がかかるわ。 いっそのこと、遅めの昼食を夕食がわりにとればいいんですよ」 ひきたての小麦粉を使って焼いた黒パンはおいしかった。 とりたての木の実のような味わいがあり、 バターがないのをおぎなってくれた。 「またいつかのサワー・ドウ(粉とぬるま湯だけで作るすっぱいパン種)を使ったんだね」 とうさんはかあさんの腕に感心した。 「ええ。イーストやミルクがないと、おいしいパンが作れないわけではありませんよ」 「まさに、『意志あれば、道あり』だ」」 とうさんはジャガイモをもうひとつとって、塩をふった。 「塩をふったジャガイモも、なかなかのもんだ。塩はジャガイモの味をよくひきたてる。 バターとグレーヴィー(肉汁から作るソース)がなければだめ、というわけでもないな」 「とうさん、紅茶にお砂糖をいれちゃだめよ。 紅茶の味わいが失われないように」 ローラがふざけた。 とうさんの目がきらっと光って、ローラを見た。 「おいしい熱い紅茶は、砂糖の味をひきたてるんだぞ、小びんちゃん」 と、とうさんはいいかえした。 ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」
by foodscene
| 2009-11-23 14:47
| アメリカ
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