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スズキ

二人がメニューを眺めている間、
壁にひかえていた女が近づいてきた。
「今日はスズキのいいものが入っておりますけれども」
「じゃ、私はそれをグリルにしていただくわ」
「僕は肉にします。
僕はここのレバーの煮込みが大好物なんですよ」
黒いワンピースに身を包み、カトリック系の女教師のような女はにっこりと微笑んだ。

「奥でつくっているシェフは、どうもあの女性の息子らしい。
もうひとり息子がいますけれど彼はソムリエをしています。
もうじき出てくるでしょう」
「家族でやっている店って本当なのね」
「だけどここの店はうまいですよ。
本場で修行してきた息子の夢をかなえるために、
一家で協力しているっていう感じですよね」

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前菜の盛り合わせが運ばれてきた。
野菜のマリネ、ホワイトソースにからめたそら豆、
生ハムなどがほんの少しずつ綺麗に盛られていた。

「とてもおいしい」
瑞枝は言った。
口の中に入れた生ハムの塩味と、ワインのさわやかさがとてもよく合った。
「高林さんは東京に来るたびに、おいしいレストランへよく行くのね」
「そんなことはない。仕事がたて込んでいる時は、
そこいらの定食屋や牛丼屋に入ります。
だけど今日は瑞枝さんと一緒だから、
どこかいいレストランへと一生懸命探しました」
「まあ、ありがとう」
by foodscene | 2010-02-22 16:18 | 日本


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