しばらく話しているうちに、
気がついたら麻からメシを食うのを忘れているのだった。
で、三人で連れ立って地階の食堂へゆき、
僕はとうもろこしのスープと豚カツをたべ、
あとの二人は何やら注文しかけたところで、
局内の拡声器から呼び出しのアナウンスをうけて、
「じゃ、たのむよ」とそそくさと立ってしまった、
どっちをむいても十分とむだバナシをしていられる余裕のある奴なんか、
ひとりもいないのだった。
一階のコーラ・スタンドでコカコーラを立ち飲みし、
電話を三つかけていると、
同業のライターが通り掛かった、僕は彼の妻となった元女優がちょっと好きだった、
彼に彼女をとられたように僕は感じさえしたのだった。
田辺聖子著「うたかた」