農場の少年 5 夏の楽しみ

翌朝には、ジョーンが朝ごはん前にやってきて、
父さんはアルマンゾに早く食べてしまうようにとせきたてた。
アルマンゾはアップル・パイの大切れを手に放牧場へ出ていき、
クローバーの香りを吸いこみながら、香料のきいた煮リンゴと薄いパラパラほぐれるパイ皮を口いっぱいほおばりながら歩いていった。
指先をなめおわると、羊たちを寄せあつめ、露にぬれた草の上をとおって、
南納屋の羊舎に追いこんでいった。

***

緑の葉かげにかたまったイチゴをみつけると、
どうしてもいく粒かは口にいれずにはいられなかった。
ヒメコウジの緑の小枝をちぎって、それも食べた。
あまずっぱいミヤマカタバミの茎を、かぼそいスミレ色の花のじき下まで噛んでみたりもした。

でも、家へ帰るときには、いつもかならず桶いっぱいのイチゴを持って帰った。

その日の夕ごはんには、クリームをかけたイチゴが出て、
つぎの日に、母さんはイチゴのプリザーブをつくった。

***

馬のつなぎ杭がある横に、レモネードのスタンドが出ていた。
男がピンクに色をつけたレモネードをコップ1ぱい5セントで売っていて、
町に住んでいる男の子がそのまわりにたかっていた。
いとこのフランクがそのなかにいる。

アルマンゾは町の井戸で水を飲んできたが、
フランクはレモネードを買うんだといった。
ちゃんと5セント玉をもっている。
フランクは、スタンドでピンク色のレモネードを買うと、
わざとゆっくり飲んでみせ、舌なめずりをし、
おなかをなでなでいう。
「ああ、うまい!なぜ買わないんだい、アルマンゾ?」

***
ほんのわずかな間に、ふたりはすばらしいマスを紐につぎつぎと通していった。
たっぷり二本分も釣ったのだった。
父さんはアルマンゾの釣ったのをほめ、アルマンゾは父さんのをほめ、
そして意気ようようと雨のなかをクローバーを踏んで家へ帰っていった。

ふたりともこれ以上ぬれられないというほどぐしょぬれになっていたが、
肌はポッポッとあたたまってきていた。

そのまま、雨のなかで、薪置場の薪割り台の前にすわり、
魚の頭を切りおとし、銀色のうろこをはぎ、腹をさいて腹わたをぬいた。

牛乳入れの大鍋はマスでいっぱいになり、
母さんはそれをひきわりトウモロコシにまぶして、
昼ごはんのために油であげてくれた。
「さて、午後からは攪乳を手つだっておくれよ、アルマンゾ」
母さんはいった。

このごろでは、牝牛はとてもたくさん乳をだすので、
攪乳は週に二回しなければならなかった。
母さんやねえさんたちはその作業にあきてしまっているので、
雨の日にはアルマンゾにその役がまわってくるのだった。

***

ゴトン、ゴトンゆさぶられる樽のなかで、
クリームがだんだんに変化して、小さな粒になったバターがバターミルクに浮かんでくるまで、
アルマンゾは攪乳をつづけなければならなかった。

そのあと、母さんがバターの粒をすくいあげ、まるい木鉢にいれて水で洗い、
アルマンゾは、すこしすっぱみのあるとろっとしたバターミルクを大カップ一ぱい飲みながら、
クッキーを食べるのだ。
母さんは、バターの粒からバターミルクをすっかり洗いおとすと、塩をまぜ、
かたい金色のバターをバター桶におさめるのだった。

***

正午になると、お弁当のバスケットが泉のそばでひらかれ、
すずしい木かげで、ベリイつみの人たちはみんな集まって、
食べたりおしゃべりをしたりした。
そして、泉の水を飲むと、またベリイの茂みへもどっていった。

まだ午後も早いのに、籠にも桶にも全部、
あふれるようにベリイがとれ、
父さんはワゴンを家へむけて走らせた。
日光をあびつづけ、ベリイの熟れた匂いをかぎつづけたせいで、
みんななんとなく眠気がさしていた。

何日も何日も、母さんと女の子たちはジェリイやジャムやプリザーブをつくりつづけ、
食事のたびにハックルベリイ・パイやブルーベリイ・パイが出たのだった。

ワイルダー 恩地三保子訳「農場の少年」
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by foodscene | 2012-07-12 15:52 | アメリカ


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