輝ける日々

しばしば彼は夜遅く、リハーサルの後などに、真夜中、
バンドのメンバーたちとやって来た。
そして、スクランブルドエッグを注文した。
彼は、私が作るものを気に入っていたのである。

それは、チーズを溶かしこみ、固まる前にさっと仕上げるトロトロの卵料理だった。
一度に一ダースの卵を使ったものを、さあ、食べなよと、彼は皆にすすめた。
他の人たちが残すと、彼はそれをかき集めて平らげ、
うちの母さんは料理がすごくうまいと言った。

料理がうまいなどと私を褒めるのは全人類の中でニックだけよと言いかけたけれども、
彼を失望させたくないので、そのセリフをのみこんでしまった。
また彼は、私が作るフレンチトーストとタコスが好きだった。
でも、最も好きだったのは、スクランブルドエッグだった。

彼がたまに家にいる時、私たちは夜遅く階下に下りて行き、
料理をしたものである。
いつも私はあなたのそばにいるよ、そう感じさせてやりたかった。
そして、たいてい私はそばにいたのだが、私たちにとって真夜中のキッチンは語り合う場であり、
時間を共有する場であった。

ダニエル・スティール 畑正憲訳「輝ける日々」
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by foodscene | 2012-09-11 16:11 | ノンフィクション・アメリカ


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