大草原の小さな家 2 クリスマス

夕ごはんには塩づけのブタ肉がありました。
これで塩づけブタはおわりになったので、とうさんは、翌日は狩りにでかけました。
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そこで、かあさんは、できたての暖炉に、こぢんまりした炉をつくり、
草原ライチョウのローストを夕ごはんに焼きました。
そして、その夕方、はじめて家のなかで食事をしたのです。

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外では、うす紅の空のはるかむこうまで、風は吹きわたっていき、
野生の草がはげしく波うっています。

でも、家のなかは、何もかもがここちよいのです。
ローラの口に入れているおいしいロースト・チキンは、やわらかくたっぷり汁をふくんでいます。
ローラは手も顔もちゃんとあらい、髪もとかしてもらい、
首にはナプキンがむすんでありました。
丸太の上に、姿勢よくすわり、かあさんに教えられたとおり、ナイフとフォークをじょうずにつかっています。

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かあさんは、ひきわりトウモロコシに水をまぜて、
半月形のうすいかたまりをふたつつくり、そのまっすぐながわをならべて天火の鉄板にのせ、
それぞれの半月形に手のひらをぎゅっと押しつけました。
とうさんは、かあさんの手形がついてさえいれば、
ほかになんの味つけもいりはしないと、いつもいっています。
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そこで、みんな、牛肉をもって、家にはいりました。
とうさんもかあさんもメアリイもローラも、
ミルクはキャリーにあげることに賛成しました。

キャリーがそれを飲むのを、みんなで見ています。
ブリキのカップでキャリーの顔はかくれてしまっていますが、
キャリーののどを見ていると、ローラには、ミルクがゴクンゴクンとおっていくのがわかります。
おいしいミルクを、キャリーはひと息に飲んでしまいました。
そして、赤い舌で、くちびるについた泡まできれいになめてしまうと、
声をたててわらいました。

トウモロコシパンとジュージューいうビフテキが焼けるまで、
まちきれないほど時間がかかったような気がしました。
でも、その歯ごたえのある、汁けたっぷりの牛肉は、生まれてはじめて食べるほどおいしかったのです。

それに、みんな、とておしあわせでした。
これからはミルクも飲めるし、たぶんトウモロコシパンにつけるバターだってできるかもしれないのですから。

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毎日、ふたりはバケツに何ばいものブラック・ベリイをもち帰り、
かあさんは、それを日にあててほしあげました。

毎日、みんなは食べたいだけブラック・ベリイを食べ、その上、
冬に煮て食べるだけの干しブラック・ベリイがたっぷり残りました。

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ふとったおばさんは、草原ライチョウの熱いスープをカップに入れてもってきてくれました。
「さ、いい子だから、これをみんな飲んでおしまい」おばさんはいいました。
ローラは、そのおいしいスープをきれいに飲んでしまいました。

「さあ、またひとねむりしなさいよ。
あんたがたみんながよくなるまで、ここにいて何もかもしてあげるからね」
スコットおばさんはいいました。
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「ばかばかしい。肉切り包丁をとっておくれ。
たとえ熱がでようと寒気がしようと、このスイカは食べるからな」
「そうらしいですね」かあさんは、あきらめて、包丁をわたしました。

包丁がはいると、スイカはおいしそうな音をたてて割れました。
緑色の皮がサックリ割れると、あざやかな赤い実があらわれ、
黒い種が点々と見えます。
その赤い芯のあたりは、まるで凍っているように見えます。
その日の暑さでは、そのみずみずしいスイカは、とてもがまんができないほど心をそそりました。

でも、かあさんはぜったいに食べません。
ローラとメアリイにも、たったひと口でも食べさせてはくれませんでした。
けれど、とうさんは、たてつづけにいく切れもいく切れも食べ、
もうそれ以上はいらないとため息ついて、残りは牝牛にやろうといいました。

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やがて、暖炉の火もパチパチ陽気な音をたてはじめ、
あぶらののったカモの丸焼きができあがり、
トウモロコシパンが焼けました。

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ひきわりトウモロコシもずいぶん倹約したけれど、
もうほとんどないし、お砂糖だってそうですよ。
ミツバチの巣のある木をみつけることはできても、
わたしの知ってるかぎりじゃ、ひきわりトウモロコシの木なんかありゃしないし、
来年にならなければトウモロコシの収穫はないでしょうに。

それに、塩づけのブタ肉がすこしあったら、鳥や獣の肉ばかりのあとだから、
きっとおいしいだろうと思いますよ。
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小さな紙ぶくろいっぱいの、雪のような白砂糖もありました。
かあさんが袋をあけると、メアリイとローラは、その美しい砂糖のまばゆいほどの白さをながめ、
スプーンに一ぱいずつその味をみさせてもらいました。
かあさんは、その袋の口を、またきちんとむすんでしまいます。
白砂糖は、お客さんのときにつかうのでした。

それに、とうさんは、釘もひきわりトウモロコシも脂身のブタ肉も塩も、
みんなもってきました。

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とうさんが、大きなふとったシチメンチョウをさげてはいってきました。
「これが二十ポンドが欠けたら、羽から何から丸ごと食べてみせるぞ」
とうさんはいいます。
「クリスマスのごちそうにどうだ、これは?
ローラ、この脚一本、たいらげられるかい?」
ローラは、食べられるといいました。
***
ローラとメアリイは、あまりがっかりしないようにつとめていました。
かあさんが、野生のシチメンチョウの羽をむしって料理のしたくをしているのをながめます。
それは、まるまるふとったシチメンチョウでした。
***
ふたりは、もういちど、靴下に手をつっこんでみました。
長い長い棒キャンデーがでてきます。
紅白の縞になったハッカのキャンディーでした。
ふたりは、そのきれいなキャンディーをまじまじと見つめていましたが、
やがてローラは、自分のをほんのひとなめなめてみます。
でも、メアリイは、ローラほどいやしんぼではないので、ひとなめさえもしません。

靴下には、まだ何かはいっていました。
メアリイとローラは、何か小さな包みを見つけました。
あけてみると、ハート型のお菓子がはいっています。
すべすべした茶色の表がわには、まっしろなお砂糖がふりかけてありました。
そのピカピカしたつぶは、まるで粉雪がちらしてあるようです。

そのお菓子は、あまり美しくて、食べるのにはもったいないようです。
メアリイとローラは、ただながめてだけいました。
けれど、とうとう、ローラはそれをうら返してみて、おもてから見てはわからないように、
ほんのすこしだけかじってみました。
その小さなお菓子のうちがわはまっしろなのです!

それは、まっしろなメリケン粉に、まっしろな砂糖であまみをつけてつくってあるのです。

***
ミルクはピカピカのあたらしいカップで飲みましたが、
ウサギのシチューやひきわりトウモロコシのマッシュはとてものどをとおりません。
「むりに食べさせなくてもいいですよ、チャールズ。
すぐにお昼のごちそうですから」かあさんはいいました。

クリスマスのディナーには、やわらかくて汁のたっぷりある、
シチメンチョウのローストがでました。
サツマイモは、灰のなかにうずめて焼き、きれいにふいて、
おいしい皮ごと食べられるようにできていました。

さいごの白いメリケン粉でつくった、塩あじの、よくふくらんだパンが一本あります。
そして、そのほかに、まだ、干しブラック・ベリイの煮たのと小さなお菓子もあります。
でも、この小さなお菓子は、茶色のお砂糖がはいっていて、
表にも白砂糖がまぶしてはありませんでした。
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とうさんが、つかれてこごえて狩りから帰ってくると、
かあさんがブリキのお皿によそってくれる、ほんのすこしの塩ブタであじをつけたとろっとした豆がゆの
夕ごはんほどおいしいものはないのです。
ローラはあついのもすきでしたし、つめたくなったのもすきで、
とにかくそれがある間、いつまででもおいしいのが豆がゆでした。
でも、九日なんて長い間残ってはいませんでした。
いつもその前に食べきってしまうのでしたから。


ワイルダー著 恩地三保子訳「大草原の小さな家」
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by foodscene | 2012-10-05 16:07 | アメリカ


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