ウビさんのお母さんは小柄な人だが、見るからに芯の強そうな、
いかにもイタリア人のお母さんというタイプの人である。
僕らを家の中に案内して、すぐに昼食を作ってくれる。
メニューはトルテリーニのトマト・ソースと、野菜サラダと、ブロコレッティとアーティチョークと
じゃがいもの煮野菜と、肉料理が二品。
とても美味しい。全部自家製である。
料理ができたところで、お父さんの偏屈バチスタが戻ってくる。この人は完全な酔っ払いで、朝から晩までワインを飲んだくれている。
御飯もろくに食べない。鼻がサンタクロースのように赤い。
(村上春樹著 「遠い太鼓」より)