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養老院より大学院

先日、編集者が仙台に遊びに来た。
言っちゃナンだが、本当にみんなよく来るのである。
私は大学院生として学ぶために仙台にいるということを、
彼らはすっかり忘れている。

特に三陸沖のサンマに脂がのってからというもの、
先客万来である。

暑いうちは来なかったのだから、彼らの意図はミエミエ。
とは言え、仙台は本当にお酒も食べ物もおいしく、編集者やプロデューサーが来るたびに
「今夜は牛タン」、「今夜はサンマ」、「今夜は天ぷら」と、院生に教わった店を
大喜びで渡り歩いている私であり、これではホントに学びに来ているんだか飲みに来ているんだかわからないわ・・・・・・。
でも、彼らのせいである。

(中略)

川原は聞きしにまさる賑わいで、あっちでもこっちでも芋を煮る煙とサンマを焼く匂いの饗宴である。

私たちは大鍋に2種類の味を作った。
私はこれも初めて知ったのだが、ひとつは芋煮の本家「山形風」で「里芋、牛肉、醤油味」である。
もうひとつは「仙台風」「里芋、豚肉、みそ味」だ。

両方ともコンニャクや野菜やキノコなども加わって、熱い芋煮と冷たいビールのおいしいことと言ったらない。

色づいた木々を眺めながら、川原に吹く風を受けることの何という気持ちよさ。

夕陽が西に傾く頃には寒くなり、続きは研究室でやろうと、また歩いて帰る。
残った薪などを自転車にくくり、私と慎太郎君と喬君と寛子ちゃんとでおしゃべりしながら歩く。

3人は大学院の同期である。私とはすごい年齢差なのだが、常日頃から何らのいたわりも頂いていない。
この日も大きな酒びんを持たされる。


(内館牧子著 「養老院より大学院」より)
by foodscene | 2007-02-12 22:15 | ノンフィクション日本


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