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なんでやねん

ナイトバード・ドライブ19番地の今夜のメニューは、
マッシュルーム・スープとチキン・ヴォロー・ヴァンとチョコレート・ムースだ。
ボッボの両親が来ることになっている。

「メアリ・フィッシャーは夕食に何を食べているんだろう」
先刻彼の妻が考えていたのと同じことを、ボッボも考えた。

彼の愛人は、料理をほんのひと口ずつ上品に口に運ぶ。
彼はその口に運ばれる食べ物になりたかった。
飲みこまれ、一体となりたい、スモーク・サーモンのスライスに、オレンジのひと切れに、シャンペンのひとしずくになりたい、と彼は願った。

メアリ・フィッシャーが、他人の絵空事を紡ぎ出しながら、好んで口にするのはそういう食べ物だ。
好みのうつさい、気難しいメアリ・フィッシャー。
彼女は言う。
「スモーク・サーモンひと切れなら、大きなツナ缶1個の値段とそんなに変らないわ。
 しかもずっとおいしいのよ」


やがて、家が静かになり、ひとりきりになると、
トーストにしてあんずジャムを塗ったマフィンを4個、食べた。

土曜日の朝、ルースはアンディとニコラにちゃんとした朝食をつくってやった。
冷蔵庫にある卵を全部(近所の店にいつも卵が配達される木曜日まで、十分持つ数の卵)と、ベーコンを全部、使った。

冷凍庫の底に(ボッボが家を出て以来、庫内の貯蔵品の量は減る一方だった)スライスしたパンを見つけ、トーストもつくった。
マーガリンの代わりにバターを食卓に出し、さらに蜂蜜を全部食べてしまえと子供たちに命じた。

びんの中には蜂蜜がまだ半分、残っている。
子供たちは探るような目で母親を見たが、食べてしまった。


(フェイ・ウェルドン著 森沢麻里訳 「魔女と呼ばれて」より)
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by foodscene | 2006-07-31 02:44 | アメリカ

カレン・カーペンター

毎朝、イッチーとカレンはカレンのスイートルームで同じ朝食をいっしょに食べた。

オレンジジュース、両面を半熟に焼いた目玉焼き2個、ベーコン、白パンかライ麦パンの
トースト、コーヒー。

一見ごく普通だが、何年もダイエットの奴隷として過ごしてきた人間にとって、
栄養とはことごとく排除すべきものを意味した。

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ところが驚いたことに、カレンがシュリンプ・サラダを食べたいから
地元のチェーン・レストラン、ボブス・ビッグ・ボーイに行かないかと言いだした。

ハロルドは嬉々として車を運転し、ふたりをその店に連れていった。

ハロルドとアグネスはチキンを食べるのに気をとられて、
カレンがかなり大盛りのシュリンプ・サラダをおいしそうに頬張る光景の意味を
深くは理解できなかった。

カレンはサラダのおかわりを注文し、それをがつがつと口に運んだ。

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最近の何週間でカレンの嗜好は辛い食べ物へと移っていた。
レストランを出て、隣のタコスの店に目がとまると、
両親にちょっと待っててと言ってなかに入り、
持ち帰り用のタコスを買った。

「もう少しで気絶するところでしたよ」とアグネスは言う。
「あの子がタコスを食べたがるなんて信じられませんでしたからね」

車にもどってきたカレンはあいかわらず陽気で、父親にキャデラックを家まで運転させてもらっていいかと訊いたほどだった。

そうして家にもどると、今度はキッチンのカウンターに行って、
辛いソースをかけたタコスをむさぼるように食べ、面食らいながらも笑顔を浮かべる母親に
こう言った。
「ああ、おいしかった」


(レイ・コールマン著 安藤由紀子、小林理子訳 
 「カレン・カーペンター 栄光と悲劇の物語」より)
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by foodscene | 2006-07-31 02:34 | ノンフィクション・アメリカ

30代 女たちの日記

幼稚園から帰って里織はピアノ教室へ。

その間、赤ペンにかかる。
採点の途中で、好物の芋かりんとうが無性に食べたくなって、ひと休みしてCDラジカセでチャゲ&飛鳥の「TREE」を聴きながら、ポリポリと1袋あける。

夕食に、ちょっとリキを入れてシーフードマリネ、仔牛のカツレツ、バジリコとトマトソースのスパゲッティーを作る。
香草(パセリとかバジルとかオレガノ)を使ったりする料理なので、志穂はムリかと思ったが、意外にもモリモリと食べてくれた。

3時過ぎ、昼食。
ホカ弁(センギリ屋)のショウガ焼弁当。
肉ちょっとかたい。

駅前ビルの芳林堂書店につきあってから地下の「文流」でスパゲッティーを食べる。
少し並んだけど、ここのホワイトソース味のスパゲッティーはおいしい。

フリスキーのツナ缶を開けて、私はピーナッツバターのトーストを食べて出勤
(ピーナッツバターは氷川台のパン屋のオリジナルでけっこう美味)。

朝食はトンカツ。
これもわが家では別段珍しいことではない。
昔から朝はゴージャス、夜は質素というパターン。
慣れているので、目覚めると自然にオナカがキューと鳴る。
「ひらり」(NHKの朝ドラ)が始まる前に家族そろってトンカツをガツガツ食べる家は、
日本に何軒くらいあるのだろう。
父はもう62になるが、いまでもアブラっこい肉類なんかをバクバク食べている。

Bunkamuraのカフェは、ちょっと気取った雰囲気でおちつかなかったが、
母はデミタスカップのコーヒーを飲み、
慣れない手つきで生ハムをはさんだフランスパンをちぎりながら、
保育園のませた園児の話をたのしそうに話した。

昨夜イタメシをデザートまでちゃんと食べて、お酒もけっこう飲んでしまったので、
朝はイチゴ(ビタミンの宝庫)だけにして、昼は赤坂のナチュラルハウスの大豆弁当。

大豆とヒジキを和えたオカズだけのお弁当で、はじめは苦手だったのだが
食べつけるとこれはこれで悪くない。

リンコスはハワイアン・サンのグアバジュースとかハーゲ(ンダッツ)のカプチーノとかがあって
ハワイっぽくて好きだ。

きのうの残りのタイ料理(アジア好きのボブのリクエストで最近マスターしたのだ。
トムヤムクンと春雨のイタメモノetc)を突ついてから、京成電車に乗って柴又へ。

ちょっと空模様があやしかったが、帝釈天を抜けて江戸川の土手で草モチを食べながら
ピクニック。
少し旬をはずれたけど、柴又の草モチは近くの江戸川辺りで採れるヨモギを使っていて
なかなかおいしい。


(泉麻人著 「30代 女たちの日記」より)
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by foodscene | 2006-07-31 02:24 | ノンフィクション日本

アメリカよ!あめりかよ!

猛烈な空腹を感じていた。

アメリカに着いて以来、固形物を口にしたのはデモイン市でのハンバーガーだけだった。
あとはずっと、コーラを飲み続けていた。

財布の中味をチェックしてみた。
17ドルとちょっと残っている。
ハンバーガーが50セントだったから、あとの約2ドル50セント分はすべてコーラに使ったことになる。
自動販売機のコーラは10セント、ということは25本のコーラを4日間で飲んだわけだ。
体中が水ぶくれしている感じだった。

その夜はターミナルのスナック・バーで、ホットドッグを5本たいらげた。

翌日、学校に着くというのに、あまりハングリーな顔つきをしていたのではみっともない。

この時食べたホットドッグほどうまいと思ったものはなかった。

以来、ホットドッグは私の一番の好物となった。
今でも私は、アメリカの最高の食物はホットドッグであると思っている。
(今日、日本にはアメリカのものがほとんど入ってきているが、本場のホットドッグにだけは、ついぞ見かけたことがない。ハンバーガーやアイスクリームなどより、はるかに日本人受けすると思うのだが・・・)


(落合信彦著 「アメリカよ!あめりかよ!」より)
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by foodscene | 2006-07-31 02:11 | ノンフィクション・アメリカ

彗星

ルシイ・Wは会話の中身の実に豊かな人だった。
作品が近々レコードに吹きこまれるよし。

コマンダー・パレスの外庭で、噴水の飛沫をここちよく浴びつつ、
満開のバラのまぶしい紅を賞でつつ、名物のカキを食べる。

食前酒はこれまたニューオルリーンズ独特のカクテル、Sazerac 冷やしたグラスの中をアブサンでしめらせ、バーボンとアンゴスツラの苦味とレモン汁とをまぜてそそぎ入れたもの。
非常に強いがさわやかな味である。


(犬養道子著 「マーチン街日記」より)
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by foodscene | 2006-07-30 12:14 | ノンフィクション・アメリカ

町を歩く。
ミモザの花の香り、あたりに満ちて心地よし。
華氏60度。
女の服装がニュー・イングランドと打って変ってシックである。

夜、有名なカリビアンルームにて食事をとる。
カキのロックフェラー、海老の酒蒸し、そしてアーティショーのサラダ。
こまやかな味であった。
ボージョレの葡萄酒またよし。

ローマのトランス・テベレの、時代を経た煉瓦でかこまれた古いレストランを思いおこさせる、
風情に満ちたパティオに、あじさいの紫とミモザの黄とつるバラの紅が咲きみだれ、
雪にうもれたニュー・イングランドを思うと、嘘のようだ。

花のあまりの美しさに、ブランデーを嘗めながら、つい時をすごす。


(犬養道子著 「マーチン街日記」より)
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by foodscene | 2006-07-30 12:09 | ノンフィクション・アメリカ

ケイジャン

1840年来有名なアントアン・レストランにゆく。(ジェイン・H、ルシイ・W等と。)

創設後164万5千人目とやらの客となり、ロックフェラーが巨万の富をつくった年に
コック長が「発明」したという、カキのロックフェラー風料理を食べる。
相の手はやはりサゼラック・カクテル。
アントアンのボーイは、客が何十人何百人であろうと、注文を一切ノートに書かず、
まちがいを犯さずに、ちゃんと運ぶので有名である。

ジェイン・Hの教えてくれたロックフェラーのソースの材料次の通り。

レタス 2/1球
ほうれん草 1包半
パセリ 5枚
青ネギ 3本
セロリ 1本(葉のみ)
ニンニク 6個
バタ 2ポンド
アンチョビー 2カン
上質の生パン粉(ごくこまかいもの) 4カップ
ウースターソース 少々
ホワイトクリーム
トマトケチャップ(自家製) 1瓶
塩 
コショウ
タバスコ
パプリカ

緑の野菜をゆでてうらごし。
カキの殻にうらごしを詰め、カキをのせ、ニンニクのしぼり汁とバタをまぜて火にかけ、
のこりのものを加えてとろりとさせ、カキの上にかけてオヴンで焼く。

―と彼女は言うが、アントアンのロックフェラーは、どうしてどうして、そんな材料で出来ているとは思われなかった。
ロックフェラーを注文する客にはカードをくれる。
南北戦争時、リイ将軍旗下の幕僚のかくれたという水色っぽい部屋を見せてもらったが、
今日われわれが坐ったのは、「紅の部屋」で、古風で少々仰々しかった。

食後、名物のカフェ・ブリュレ・ディアボリックを飲む。

コニャックとコアントロー酒とコーヒーとオレンジの皮のしぼり汁とをまぜ、
銀のカップにそそぎ、部屋の照明を消しておいて火をつける。
まさに悪魔の舌のような青い焔がゆらゆらとたちのぼる。
悪魔の名をもつ飲物だが、味は天国の味のごとく香り高く美味だった。

ニューオルリーンズの食物には、フランスの繊細さとスペインの即興的な感覚が満ちている。
ここにはソフィスティケイションがある。

そういえば、街をゆく女性の服装は、ニューヨーク、サンフランシスコに次いで、シックである。
一般のアメリカ婦人のあの、ゴテゴテとした、しかも神経のゆきとどかぬ服装ではない。


(犬養道子著 「マーチン街日記」より)
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by foodscene | 2006-07-27 01:40 | ノンフィクション・アメリカ