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主夫と生活 3

俺は無言で彼らをショッピング・センターまで送り届けた。

そしてその帰り道、俺は1軒の店に立ち寄った。
肉屋である。

俺はそこでシチュー用の肉を仕入れ、家に帰るやいなや肉を炒めて煮こみ、
スープのもとを作りあげた。
俺の知る限り、野菜スープにはなんといったってビーフ・ストックでだしをとるのが一番いいのだ。

スープの中に入れる野菜に関しても、俺はクローディアの指示を完全に無視した。
俺は、自分がいつも使いなれた、平凡な野菜ども、すなわち、玉葱、蕪、キャベツ、人参を使ったのである。

5時になると、俺は骨と肉をスープから取り出し、残りの野菜スープをトロトロと煮こんでいった。

やがてクローディアの友人たちが次々にやってき始めた。
彼らのうち6人は菜食主義者で、俺はもちろんあらかじめそのことを承知していたから、
彼らに対してだけはさすがに少々心が痛んだ。

さて、俺がスクエアな郊外族という演技で客たちを迎え入れ、
そろそろみんなを食卓へいざなおうとしていたまさにその時、
クローディアが意気揚々と帰ってきた。
両腕は買い物の包みで一杯だ。

彼女は真直にスープ鍋に歩み寄ると蓋を取った。
濃厚で、ゆたかで、深みのあるビーフの香りが台所一杯に立ちこめる。
「まあ、この匂い!最高ね」

俺は一と言もいわず、彼女がスープの香りを胸一杯吸いこみ、
ついでと一と口味見するのを眺めていた。
「マイクル!このスープ、私がいつも作るのよりずっと素敵よ。
 一体どうやってこの肉みたいな味をつけたの?」
「ウースター・ソースさ」俺はいった。
「それもたっぷりね。もちろんベースはマッシュルームと茄子でとってある」

「これ、茄子のスライスを上にのっけて出してくれるんでしょうね。
 私はいつもそうしてるんだけど」
「クローディア!いいかげんにスープの味見はよしてくれないか」

突然私にぴしゃりと叱りつけられて、彼女は驚きの表情を浮かべ、
慌ててスープ鍋から離れた。
そして珍しく、俺がスープを皿に注ぐのを手伝い、
客たちに運びさえするのであった。

菜食主義者の客たちは、もう絶えて久しく肉を口にしていない本格的な連中だったが、
しかし菜食主義も所詮頭までのこと、胃の腑まではなり切っておらぬのだろう、
何度も何度も戻ってきてはお代りの皿を差し出すのであった。

やがて食事が済み、子供たちが皿を片付け始めた。
俺はクローディアが片付けに参加するかどうかを見守ったが、
彼女のお手伝いはさっき手伝ったのが最初で最後だったらしく
動こうとする気配もない。

俺は客たちを無視して席を立ち、子供たちの片付けに加った。

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「サンディと私は予定より早く発つことにしたわ」
「ア、そう。それで?」
「明日の朝早く汽車に乗るわ。
 汽車はハンティングトン発よ。
 最後まで送らせるのは悪いけど私たちを駅まで連れてってちょうだい。
 それだけ早く私たちを追い出せるんだから、あなたにとっても悪い話じゃないでしょ?」
「ああ、そういう話ならお門違いだ。
 明日君らを送るのはコリーヌさ。
 俺は君ら二人のために、もう十分タクシーの役を勤めたからね。
 それから、もう一つ。
 俺は正直をモットーとしてるからいうんだが、今夜の野菜スープには肉が入っていたんだ」

これが俺とクローディアの最後の会話であった。

翌朝、俺はいつになく寝坊しているところをコリーヌに起された。
コリーヌはこれから二人を駅まで送ってゆくところだという。
「二人にさよならいわなくてもいいの?」
コリーヌが聞いた。
「君が二人分いっといてくれよ。永久にさようならってね」


(マイク・マグレディ著 伊丹十三訳 「主夫と生活」より)
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by foodscene | 2006-08-28 02:12 | ノンフィクション・アメリカ

主夫と生活

今日はスーパーマーケットへ食糧の買い出しに行く日だ。

しかしクローディアたちが自然食だとわかった以上、
買い物の内容も違ってくる。

俺は古い買い物リストを破って、新しいリストを作ることにした。
とりあえず「玄米」と書いてみる。
ところが、あとがさっぱり出てこないのだ。

「私もつきあいましょうか。買う物は全部わかってるんだし」
クローディアがいった。
「あなた、それがいいわよ」コリーヌもいう。
「私も一緒に行きたいんだけど、今日はすごく忙しいの。
 だから悪いけどあなたがたにおまかせするわ」
そういってコリーヌは、なんだかひどく嬉しそうに会社へ出かけてしまった。

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クローディアはいまだに特製野菜スープ用の材料を集め続けていた。
「ほんとにあなたにはお世話になってるんですもの。
 スープぐらいは御馳走しなきゃ。
 ほんとにおいしいんだから」

しかし、日が経つうち、スープ・ディナーの計画は、内々の試食会から、大宴会に発展してゆく気配を示してきた。
クローディアは、ヒッチハイクで来られる範囲に住む自分の仲間たち全員に声をかけ始めたのである。
問題の土曜日のディナーは全部自分が作るのだから、仲間を招ぶ権利があるというのだろう。


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そして―
遂に土曜日の午後がやってきた。

俺は冷蔵庫を開けると、1週間かかって貯めこんだ野菜の数々を取り出してまな板の傍に
並べた。
大きなスープ鍋も磨き上げておいた。
俺としては、今にもクローディアが台所に現れて、野菜を切ったり刻んだり、
鍋で煮たりし始めるものだとばかり思っていたのである。

これが大間違いであった。
台所へ現れたクローディアはこういったのである。
「ちょっと聞いて。
 今日は私たちのイースト・コースト最後の日でしょ。
 私たちどうしてもやっておかなきゃならない買い物があるんだけど、あなた、
 ショッピング・センターまで連れて行って下さるかしら」

「それはいいと思うが―」俺は我慢強くいった。
「買い物なんかしてたら友だちがやってくる前にスープを作る時間がなくなっちゃうんじゃないの
 かね?」
「そうねえ― じゃあ、スープはあなたにおまかせするわ、本当に悪いと思うけど、
 でも材料を鍋に放りこむだけだから簡単よね?
 本当に難しいのは材料を集めることであって―」
「おいおい、クローディア」
「わかってるわよ。わかってるったら。
 私がやるようにはうまくいかないんじゃないかって心配なんでしょ?
 大丈夫、うまくいくわよ、私が保証したげる。
 そんなことより、早く行きましょ。
 お店が閉まっちゃったら大変だわ。
 ああ、それからねマイケル、迎えにきてくれなくてもいいわよ。
 私たちはヒッチハイクして帰ってきますからね」

誰が迎えの心配などしているものか!
俺が心配だったのはただ一つ、
自分が今にもクローディアを絞め殺しはしないかということだけであった。
そろそろ、はっきりと、いうべきことはいわずばなるまい。

「クローディア」俺はいった。
「今日うちへやってくる連中は<君の>友だちなんだよ」
「アーラ大丈夫、大丈夫。
 みんなあなたのこと気に入ると思うわ」


(マイク・マグレディ著 伊丹十三訳 「主夫と生活」より)
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by foodscene | 2006-08-28 01:57 | ノンフィクション・アメリカ

主夫と生活 7

この時期になると俺の客料理の腕前も相当なものになっていたから、
準備に手間どるなどということもない。

クローディアとサンディのために、俺は最近発明した「鶏の胸肉のスペシャル」というのを
作ることにした。
これはどんな料理の本にものっていない、全くの俺の独創である。

骨なしの胸肉を、バター、レモン、ワインでソテーする。
この時、人のあまり使わないマージョラムというスパイスを利かせるのが唯一のコツ、
あとは菠薐草を添えてオヴンに入れればよいという、簡単至極な料理だ。

2人の恋人たちはナップサックを降ろし、サンダルを脱ぎ捨てるとすぐに寛いだ。

と、いっても、俺たちと彼女たち、両者の世界の差が消滅したわけではない。
最初の数時間、俺たちはとりあえずコミュニケイションのための共通の言語、
及び共通の文化的基盤を確立するために努力せねばならなかった。

たとえば最初の日の午後一杯、クローディアと俺たちは、自分たちがいかに若いか、
お互いいかに齢をとらないかを論じあって過したものだ。

やがて食事の支度にとりかかる時間がやってきたので俺は立ち上がった。

彼女たちも俺の後からついてきて、俺が鶏肉に粉とスパイスをまぶすのを注目している。

サンディが何かいいたそうだ。
しきりにクローディアの袖を引っぱっている。
まるで小さな子供がお母さんの注意を惹こうとしているかのようだ。

「あらいやだ」クローディアがいった。
「今気がついたけど、それ、もしかして鶏肉じゃない?」
「そうだよ、鶏の胸肉さ。どうかしたのかね?」
「いえ―どうぞお料理を続けてちょうだい。ただ、私たちの分は作らないで。
 無駄になっちゃうから」
「あら、鶏は嫌いだったの?」コリーヌが聞いた。

「私手紙に書いたつもりだったんだけど― 実はサンディは自然食なの。
 それで私も彼女の影響で、今ではそれが一番いいと思うようになったのよ。
 だから私たちな肉類は食べないの。
 もちろん、あなたがたは予定通り召し上がってちょうだい。
 私たちは自分でなんとかするから」
「いやいや、そうはいかない。
 ちょっと考えさせてくれ」
俺はいった。
しかし、今日の予定では、あとは菠薐草のサラダがあるだけで、これもベーコンを炒めた油を
かけて食べようという趣向だから、自然食主義者には工合悪かろう。

「ようし、こうしよう。
 もともと今日は外で食べようかなと思ってたのを変更して、俺が料理することになったんだ。
 予定を元へ戻して外で食べようじゃないか」
「あら、素敵!」クローディアがいった。
「私たち、もう1年もレストランで食事してないのよ」

よし、そうと決まれば、菜食主義者でも食べられて、しかもオーバーオールにサンダル履きでも気楽に入れるレストランを探さねばならぬ。

あれこれ思いめぐらせた揚句、結局俺たちは近くのショッピング・センターにあるチャイニーズ・レストランに落ち着くことになった。

出てくる中国料理を次々に平らげながら、われわれはクローディアの話に耳を傾けた。
クローディアは、今、第一に玄米、次に環境問題、それから女房の世話に凝っているのだという。
俺は「女房」というのがサンディのことだとわかるのに相当時間がかかった。

「お宅にいる間、私と女房で何でもお手伝いするわ」クローディアがいった。
「たとえば料理のお手伝いとか―」

「そりゃありがたいが、しかし、一体どんな料理だい?
 さっきから君たちに何を食べさせればいいか考えてたんだけど、 
 俺はチーズ・スフレぐらいしか思いつかなかったぜ。
 かの有名なしぼまないスフレさ」
「あら卵は駄目よ。私たち、どうせ自然食をやるなら徹底的にやらなきゃ意味がないという考え
 なの。
 卵というのは要するに育つ前の鶏でしょ、だから私たちは食べないの」

「フーン、一体君たちはどんなものなら食べられるのかね?」
「あら、動物性以外ならほとんど何でもOKよ」

俺は考えをめぐらせたが、一品も頭に浮かんでこない。
「家ではどんな料理を作ってるのかね?」
「私の得意なのは陰陽スープね。お宅にいる間に作ってあげるわ。
 オクラは手に入るでしょ?」
「オクラね。オクラをどうするんだい?」
「明日になればわかるわ。必要なもののリスト渡すから買い物してくださる?
 信じられないくらいおいしい野菜スープを作ってあげるわよ。
 大体、普通野菜スープって肉でだしを取るでしょ、これが大間違いなのよね。
 私のなんか茄子とマッシュルームでだしを取るんですもの」
「いやあ、なかなか興味深い」
「まあ、見てなさいな」


(マイク・マグレディ著 伊丹十三訳 「主夫と生活」より)
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by foodscene | 2006-08-21 01:18 | ノンフィクション・アメリカ

あぢー

こうして、ある麗らかな春の日曜日、俺は思いきって身内の全員をディナーに招くことになったのだ。
父と母、そして兄の一家である。

メニューは、今回はともかくも安全第一、失敗の恐れのないものだけを選ぶことにした。

まずスープはガスパッチョ、これをアーネスト・ヘミングウェイが愛用したといわれるレセピーで作る。
次に近くの海岸で獲れたばかりのムール貝を、バターとガーリックとパセリで炒めてワイン蒸しにしよう。
ここまではよい。

問題はメイン・ディッシュである。
あまり仰々しいものは作りたくないし、さりとて、メイン・ディッシュである以上、何か意外性がほしい。
結局、あれこれ考えた揚句、俺はメイン・ディッシュを、クランベリーとホースラディッシュのソースで煮込んだニュー・イングランド風ポット・ローストと決めた。

デザートはチョコレート・ケーキ、これはパーティー当日の朝のうちに焼いておく。

俺はディナーの計画を細部に至るまで練り上げていった。
オードブルとデザートは前もって調理済みにしておこう。
そして、ポット・ローストが煮えている間に、俺はムール貝のワイン蒸しを皆の前へ持ち出し、
貝がパックリ口を開けるのを見せてやろう。

懸命にもてなしているという印象を与えるためには、こういう演出が是非とも必要なのだ。

そう、なんなら、食事開始の15分前あたりから、5、6個の鍋やポットをオーケストラさながらに指揮してみせてやってもよい。

ウン、これは相当なディナー・パーティーになりそうだぞ。
みんなが俺の料理にアッと息を呑む大晩餐会―


(マイク・マグレディ著 伊丹十三訳 「主夫と生活」より)
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by foodscene | 2006-08-21 01:02 | ノンフィクション・アメリカ

モーニング・レイン

この時間だとまだ食堂が空いているので、
食堂のおばさんが10円足しただけでいろんなサービスをしてくれる。

たぬきうどんの大盛にきつねや卵を入れてもらったり、
ご飯に野菜の天ぷらを載せて、うどんのつゆをかけてもらったり、
なんでも自由自在にできる。

一度加藤が、かき揚げたぬき卵入りカレー丼というのを作ってもらったこともあった。
僕らはもう完全に食堂の顔になっている。


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今日はクラブがなかったので、帰りに加藤とケネディと村木といっしょに
学校の近くにある肉屋にコロッケとハムカツを食べにいった。

両方とも10円で、ここのコロッケとハムカツは最高に美味しい。

僕らは学校の帰りにしょっちゅうここに寄っていく。
(クラブがあるときは、練習が終わったあと、米屋に寄って、
 ジュースを飲んでいく)

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滝が、学校の近くにピザ屋ができたという情報を仕入れてきたので、
盛と滝とケネディと僕の4人で、クラブが終わったあと、ピザを食べにいった。

が、結局僕はひと口も食べられなかった。
僕にはチーズというものがまったく食べられないのだ。
あんなに臭いものがなんでみんな平気で食べられるんだろう?


(井上一馬著 「モーニング・レイン」より)
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by foodscene | 2006-08-10 00:39 | ノンフィクション日本

そろそろ決めたい

いつも、わたしたちの前には、いろんなごちそうがならべられる。
しかし、わたしたちは、ほんのすこししか食べない。

汁の垂れる焼きたての菓子が、いまでも目の前にうかんでくる。
それから、小さく縮れた楔形のトースト、
熱い湯気を立てている薄い菓子、
ふしぎな風味をもっていて、とてもおいしく、なんでつくったのかよくわからないサンドイッチ、
非常にめずらしいしょうがパン、
口へ入れると溶けてしまうエンゼル・ケーキ、
それについてくる干しぶどう入りの、皮の張った、あまりおいしくない菓子。

それはじっさい飢えた一家族の口を1週間は十分にささえて行けるくらいの豊富な
食物であった。

わたしたちの食べ残したそれらの菓子類が、どうなってしまうのか、
わたしたちは知らなかった。

(デュ・モーリア著 大久保康雄訳 「レベッカ」より)
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by foodscene | 2006-08-10 00:31 | フランス

Supersize Me

「それじゃあ」とルースは言った。
「マクドナルドへ行って、何でも好きなものをお食べ。
 ビッグ・マックでも、スーパー・マックでも、フィレ・オ・フィッシュでも、アップル・パイでも。
 シェイクも好きなだけ飲むといいわ。
 ただし、きっかり11時に、ここに戻ってらっしゃい。早くても遅くても駄目よ」

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「じゃ、こっちはどう?カクテル・バーがあるわ。
 昔、石の壁だった所を彫って作りつけたものね。
 ソーダ水やピーナツやポテトチップスがいっぱいあるじゃない。
 あんた、好きでしょ? 
 きっと、ミセス・フィッシャーも、すぐオレンジ・ジュースを入れてくれると思うけど。
 ねえ、ボッボ?」

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そのビルの向かい側に、ファースト・フードのレストランがある。
ルースはその店の薄暗い隅に陣取って、サワー・クリームを刻みチャイブを添えた
ベークト・ポテトを食べた。
のんびりと食事をしながら、彼女はボッボが出てくるのを見張っていた。

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ヴィッキーと暮らし始めてから、ルースは日に日に太っていた。

彼女らの所帯で買える食べ物は、炭水化物の多いものばかりだった。
その上、貧しいから何もすることがなく退屈なので、女2人で日がな1日、スナック菓子をつまんだり、子供のお皿の残り物を漁ったりしていた。

時間の進み方の遅い朝は甘いコーヒーとビスケットで過ごし、気の滅入る午後は甘い紅茶とパンで過ごすのだ。

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彼女はものぐさになっていく。

満たされない情欲の苦しみも、しだいに薄れていく。
あるいは、慣れただけかもしれない。

缶詰のラヴィオリを缶から直接食べ、キャンディの袋をいくつも空け、
ウエストが太くなってきている。

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彼らは朝食にベーコン・エッグとマーマレードをつけたトーストを食べ、コーヒーを飲んだ。


(フェイ・ウェルドン著 森沢麻里訳 「魔女と呼ばれて」より)
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by foodscene | 2006-08-05 05:12 | アメリカ

若き日の日記

帰ってまた夕食までLa vie et ses problemesの訳。
これが済んだらどんなにせいせいするであろう。

明後日の班会のために材料をあずかっているので、それを如何に用うべきかを
Boston Cook Bookで研究すること1時間。
チョコレート・ケーキとクイーン・ケーキに決めた。

ロマン・ロラン「ミレー」の中に打たれる言葉あり。
曰く、「われわれにとっては、善い人が1人いれば、それで多くの悪い人の償いになるのです・・・
私は嘆きなどしません」

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午前中薬物のノート整理。
おひる、おやつのためにベーキング・パウダー・ビスケットを作る。


(神谷美恵子著 「若き日の日記」より)
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by foodscene | 2006-08-05 05:03 | ノンフィクション日本

ジャパン裏方にて

「チキンを1つどう?」とコーラがいった。
「たくさんもってきたのよ。」

コーラはパリッと金色に揚がったフライドチキンの腿をさしだした。
見ただけでローズの口につばがわいてくる。
ほしいなとローズは思った。
フライドチキンは大好きだったが、お母さんはたまにしか作ってくれない。
メンドリが年をとって卵を産めなくなったときに作ってくれるだけだった。

でも、よその人から食べ物をもらうなんて、お行儀が悪いんじゃないかしらと、
ローズは思った。
「ありがとう。でも、おなかがいっぱいなの」

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ピクルスやたき火の中で蒸し焼きにした、湯気のたつジャガイモがある。
お母さん持参のゆで卵もある。
クーリーのおばさんは中が雪のように白いビスケットをオーブンにいっぱいこしらえてきていて、
まわした。
みんな目をまるくして喜んで食べた。

昼ごはんを食べおえてから、水滴のついているスイカを切って食べた。
すばらしくあまいスイカで、子どもたちは種をどれだけ遠くへ飛ばせるか競争した。


(ロジャー・リー・マクブライド著 こだまともこ、渡辺南都子訳
 「オウザークの小さな農場」より)
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by foodscene | 2006-08-05 04:58 | アメリカ

10日間で

「キニブルーがその牛をさばいて、上等の牛肉をわけてくれたんだ」

牛肉を昼ごはん用に料理する時間はなかった。
晩ごはんにおいしいシチューを作ってあげますよ、タマネギも入れてね、とお母さんはいった。

香りのいいビーフシチューはとてもおいしく、長いことお目にかからなかったとびきりのごちそうだった。

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昼ごはんはとてもにぎやかなごちそうだった。
ローズは長いテーブルのアルバのとなりの席に、アルバのきょうだいやお父さんお母さん、
雇われてきている人たちといっしょにすわった。

スタビンズのおばさんは大皿いっぱいのフライドチキンを揚げ、もう1枚の大皿にはハムを盛っていた。

ゆでジャガイモやホミニー(粗く挽いたトウモロコシのマッシュ)、ビスケットには塗って食べるようにバターが添えてある。

ローズはビスケットを割って、割った面のぼろぼろしているほうをいためハムの汁に浸した。
それからその半分のビスケットを注意しながら、4口ずつで食べた。

このまえ、こんなにたくさん食べたのはいつだったか、覚えていないほどだった。

スタビンズのおばさんは、おいしい冷たいミルクも大きなコップにいっぱい、飲みなさいとわたしてくれた。

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ローズは校庭の端にある木の下で、ひとりぼっちで昼ごはんを食べた。

糖蜜の缶の中には、ベーコンの脂を塗った茶色いパンがふた切れとゆでたジャガイモ、それから干しリンゴを入れたアップルパイが1つ入っていた。
お母さんがいっていたびっくりするものというのはこのパイのことだったのだ。

ローズは最初にアップルパイを食べた。
あまくてパリッとしたパイが、口の中でとけていく。
アップルパイを食べたらすこし気がはれた。

それから、パンとジャガイモをゆっくり食べた。

ふたごの姉妹が近くにすわっていた。
2人は小枝模様の緑色のキャラコの、そっくりおなじワンピースを着ている。
髪形もまるっきりおなじで、頭のてっぺんにきちっとお団子に結っていた。

2人いっしょの大きな弁当箱から、フライドチキンやビスケットをとって食べている。


(ロジャー・リー・マクブライド著 こだまともこ、渡辺南都子訳
 「オウザークの小さな農場」より)
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by foodscene | 2006-08-01 01:58 | アメリカ