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給食

月曜日、シチュー&ライス。
火曜日、チーズパスタ。
水曜日、シェパーズ・パイ。
木曜日、スパゲティ・ミートボール。
金曜日、魚のフライ。以上。

これが息子の通う幼稚園の給食である。
入園が決まって間もない頃、先生に「給食の献立表はありますか」と聞いたら、
「献立表?メニューがお知りになりたいのなら、今、お教えしましょう」という答えに続いて、
冒頭の日替わりメニューがスラスラと、まるで口上でも唱えるかのように彼女の口から流れ出たのだった。

「あの、つまり、これが毎週毎週繰り返されるっていうことでしょうか」
「そうですよ」
にっこり笑って、この道20年というベテランの先生は答えた。

何年か前、当時英国に留学していた友人が、ホームステイ先の家庭で出される
「日替わりメニュー」というものについて「信じられないでしょ」と目を丸くして私に話して聞かせたことを
思い出した。
おぼろげな記憶ではあったが、その友人が口にしたメニューと、
息子の学校のメニューがとても似通っていることに気づかずにはいられなかった。
これら主菜に添えられるのは茹でたグリーンピースとか、マッシュド・ポテトとか、
ただ切っただけのトマトとか、
そんなような物であるという点においても、二つのメニューはそっくりだった。
こういう食生活が、息子という仲介者を通して、我が家に侵入してくる—
それは恐怖ともいえる戦慄だった。

現在、30代のあるイスラエル人の女性は、父親がロンドンで子供時代を過ごしたが、
その父親から聞かされた「給食の話」に強い印象を受けたといった。
「何しろ、5種類しかないんですって。毎週毎週それが繰り返されるんですって」
「ひょっとしてそこにシチューアンドライス、あった?」
「あった、あった」
「フィッシュフィンガー?」
「あった、あった」
「デザートには...」
「ライスプディング!」
「わーそれ、うちにもある、ある」

彼女の父親は今、60代後半である。
私立の女子校に娘を通わせるアメリカ人の母親はいった。
「うちのところはちょっとましだわ。
1週間交代じゃなくって、2週間交代だから。
ただ、変わるのは副菜だけよ。
メインディッシュはやっぱり1週間交代だわ」
何でもロンドンの町中にスクール・ディッシュ・レストランという店があり、
そこでは郷愁に駆られてやってくる客のために、
冒頭のような日替わりメニューが、煮すぎてくたくたになった野菜と共に供されるのだという。
ウェイトレスは、学校の女校長といういでたちで、客に対する口調もあえて「先生調」なのだそうだ。

そういえば、かつてフランスに住んでいた頃、
よく通った散歩道に区立の保育園があって、そこの掲示板に張り出されていた献立表をみるのを楽しみにしていたものだった。
「○月○日 オードヴル、小エビのカクテルとアスパラガス。主菜、羊の香草焼き。デザート、イチゴのババロア。○月○日 オードヴル、野菜のテリーヌ。主菜、七面鳥とキノコのソテー。デザート、クレーム・ブリュレ...」

長坂道子氏
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by foodscene | 2009-04-14 23:08 | イギリス