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25 皮算用

「肉が食べられるのよ!」
ショールをとって釘にかけもどしながら、ローラはいった。
「とうさんが2頭つかまえてくれればいいなあ!」
「この黒パンといっしょに食べる肉があれば、
それだけでうれしいわ。
でも、ひなが生まれるまえに数を数えるのはよしましょう」
「あら、どうして、かあさん、だって、レイヨウの群れが見つかれば、
きっととうさんはレイヨウをとってこられるわ」

キャリーがコーヒーひきのじょうごにいれる小麦を皿にいれて盛ってきた。
メアリがさっきから粉をひいている。
「焼き肉よ」と、キャリーがいう。
「グレーヴィーをかけるの。
ジャガイモと黒パンにグレーヴィーをかけるのよ!」

ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」
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by foodscene | 2009-11-25 16:40 | アメリカ

24 アルマンゾんち

「お入りください、インガルスさん!
ちょうどいいときにいらっしゃった。
パンケーキとベーコンをめしあがっていきませんか!」
「昼めしどきとは知らなかった」

ストーブの台の上に、さめないようにベーコンの皿がのっているのを、とうさんは見た。
3段重ねのパンケーキがうずたかくのっている皿もある。
しかも、ロイヤルは、さらにパンケーキを焼いているではないか。
テーブルには糖蜜もあり、コーヒーがシュンシュン音をたててわいている。

「腹がへったときが食事時でね」と、ロイヤルが言う。
「独り者の特権ですよ。
女がいなければ、食事の時間も気ままなもんですよ」
「あんたらは、食料をたっぷり確保できて、運がよかったな」
と、とうさんがいった。
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「ロイヤルのパンケーキは、とうていぼくのにはかないませんけどね」
と、アルマンゾがいう。
「でも、このベーコンは最高ですよ。
ミネソタのおやじの農場で、クローバーで育て、トウモロコシで太らせた若い豚を、
塩漬けにしてヒッコリーの木でいぶしたものですからね」
「さあ、インガルスさん、座って、どうぞ好きなだけ食べてください。
地下室にまだたっぷりあるんですから」
ロイヤルは上機嫌だった。
そこで、とうさんはそうした。

ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」
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by foodscene | 2009-11-25 16:37 | アメリカ

23 クリスマス

ミルクを持ってとうさんがもどってきた。
かあさんがそれを濾した。

とうさんはさしかけ小屋へちょっと入り、
顔いっぱいに笑みをたたえてもどってきた。
そして、かあさんに、ロフタスさんの店にあったカキの缶詰をふたつ、
手わたした。

「まあ、チャールズ!」
思わずかあさんは声をあげた。
「キャロライン、クリスマスのごちそうにカキのスープを頼むよ!
エレンの乳も、たくさんじゃないが、少ししぼったし。これでおわりだ。
もうほとんど乳は出ない。
しかし、これでどうにかなるだろう」
「水でうすめますよ。
さあ、クリスマスのごちそうに、カキのスープをいただきましょう!」

ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」
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by foodscene | 2009-11-25 16:32 | アメリカ

22 ハーソーンさんの店

次の日、朝のいつもの仕事がおわると、
ローラとキャリーは雪だらけの通りを横切ってハーソーンさんの店へ行った。
ハーソーンさんが1人でいて、
店の棚はほとんどからっぽだった。

両側の長い壁際に、男性用のブーツと女性用の靴が数足と、
キャラコの反物がいくつかおいてあるだけだった。

豆のたるもからっぽだった。
クラッカーのたるもからっぽだった。
塩漬け豚肉のたるの底にたまったほんの少しの塩水にも、
豚肉は影も形もない。
長い平たいタラが入っていた箱には、底に塩がところどころこびりついているだけだった。
干しリンゴと、干しブラックベリーの箱も、からっぽだった。

ハーソーンさんがいった。
「汽車がくるまでは、食料や雑貨は切れたままさ。
注文したものがくると思っていたら、とまってしまったんだよ」

それでも、かざり棚には、美しいハンカチ、くし、ヘアピン、ズボンつりがふたつ、
並んでいる。
ローラとキャリーはズボンつりをじっと見つめた。
ごくシンプルな、ぱっとしない灰色のだ。

ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」
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by foodscene | 2009-11-25 16:28 | アメリカ

21

「町にはもう灯油はないんだ。
それに肉もない。
店はどこも、ほとんど品物を売り尽くしてしまった。
キャロライン、今日は紅茶を1キロばかり買ってきたよ。
なくなるまえに買っておこうと思ってね。
だから、汽車が通るまで、紅茶だけは飲めるってわけだ」

「ほんとうに、寒いときに熱い紅茶ほどおいしいものはありませんものね」
と、かあさんが喜ぶ。
「それに、今はランプにたっぷり灯油が入っているし。
石油を節約するためにベッドに早く入れば、灯油もその分使わなくてすむから、
しばらくはもつでしょうよ。
あなた、紅茶を買ってくるのを思いついてくださって、うれしいわ。
なかったら、どんなにか味気ないでしょうよ!」

そのうちにやっととうさんも体が温まってきた。
それ以上何もいわずに、窓際に座ると、
最後の手紙の束といっしょにきた『シカゴ・インターオーシャン』という新聞を読みはじめた。
「ところで、石炭がくるまで、学校は休みだそうだよ」
目をあげて、とうさんはいった。
「いいわ、あたしたちで勉強するもの」
ローラはきっぱりいった。

ローラとメアリはお互いに算数の問題をつぶやきながら解き、
キャリーはスペリングを勉強し、
一方、かあさんは繕い物をし、とうさんは、新聞を読んでいた。

ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」
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by foodscene | 2009-11-24 18:31 | アメリカ

20

正午になり、土曜日にいつも焼くパンがオーブンから出された。
かりっと黄金色に焼けたパンが3つある。
それに、ゆでたジャガイモがほくほくと湯気をたて、
紅茶がはいった。
それでもまだ、とうさんはもどらなかった。

ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」
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by foodscene | 2009-11-24 18:26 | アメリカ

19

汽車がくるまでは、肉も食べられない。
バターは切らしてしまったし、
肉を焼いたときに出た脂がほんのぽっちり、パンにつけるだけ残っているだけだ。
ジャガイモはまだあったけれど、
小麦粉はあと1回パンを焼く分しかない。

そんなことを考えると、最後のパンがなくなるまでにどうしても汽車がこなければ困るという気がした。

ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」
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by foodscene | 2009-11-24 18:25 | アメリカ

18 ボーストさん

メアリはグレイスをだきあげて、椅子に積みあげた本の上に座らせ、
かあさんは湯気のたつベイクト・ポテト(焼きジャガイモ)の皿をとうさんの前においていた。
「バターがあればいいのにね」
「塩が味をひきたてるさ」

とうさんがそういったとき、台所のドアをドンドンとたたく音がした。
キャリーが走っていってあけると、
大きなふかふかのバッファーのコートをはおったボーストさんが、
クマみたいにのっそり入ってきた。
「やあ、ボースト! どうぞ、どうぞ、中へ、中へ!」

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バターをつけたベイクト・ポテトとホット・ビスケットは、ほんとうにおいしかった。
昼食のしめくくりに、かあさんの作った、
こくのあるトマトのプリザーブをそえたビスケットがまた出た。
「町には塩漬け豚肉がもうないんだ。
こんなふうに東部になんでも頼っているから、汽車がこないとすぐに食料不足になるんだな」
と、とうさんがいった。

ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」
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by foodscene | 2009-11-24 18:20 | アメリカ

17

テーブルには、ハッシュト・ブラウン・ポテト(ゆでたジャガイモを細切りにしてこんがりいためたもの)が
おいてあり、かあさんの作った、野生の食用ホオズキのプリザーブがガラスのボウルに入って、
金色に光っている。

かあさんはオーブンでかりっと焦げめをつけたトーストを大皿に何枚も重ねてのせ、
さらに、オーブンからバターののった小さな皿をとりだした。

「バターを温めなくちゃならなかったんですよ。
石みたいにこちこちに凍っていて、切れなかったから。
ボーストさんがもう少しわけてくれるといいんですけど。
こんなふうにかたい靴を靴屋がおかみさんに投げつけたんですよ」
みんながどっと笑っても、グレイスとキャリーはわけがわからず、目をぱちくりしていた。
思わず冗談が出るくらい、かあさんはうれしいのだ。

ローラがいいだした。
「でも、きのうバターがなかったから、もう切らしたと思っていたのに」
「パンケーキには塩漬け豚肉のほうがあうんですよ。
バターはトースト用にとっておいたのよ」
トーストに少しずつのせて、バターはちょうど間に合った。

暖かくて、静かな、明るい部屋で食べる朝食は、ほんとうに楽しかった。
食べおわるまえに、時計が8時半を知らせた。

ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」
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by foodscene | 2009-11-24 18:15 | アメリカ

16  クリスマス

夕食は、ゆでたての熱いジャガイモと、パンが一切れずつに、
塩がそえてあった。
パンを焼くのはこれで最後だったけれど、
また袋に豆があったし、カブもいくつか残っている。

熱い紅茶に砂糖もあった。
グレイスはキャンブリック・ティーをもらった。
ミルクがないので、お湯でうすめた紅茶だったけれど。

食べているうちに、ランプがちかちかしかhじめた。
炎は最後の灯油を懸命に吸い上げて、精一杯燃えている。
やがて、明かりがうすれはじめ、また必死でもりかえそうとした。
かあさんはかがんで、ふっと火を吹き消した。
暗闇がしのびより、嵐のとどろきと金切り声がますます激しくなった。

「どっちみち、消えるところだったんですからね。
さあ、もう寝てしまいましょう」
静かにかあさんがいった。
クリスマスはおわった。

ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」
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by foodscene | 2009-11-24 18:10 | アメリカ