「ブレックファーストに食べなさいね」
壜詰めになったピーチとアプリコットを窓越しに喜代志に渡した。
彼女が自分で調理し詰めたものだ。
階下の納屋の中には、彼女の製品が棚にずらりと並んでいる。
自分で食べるというより、
人にあげるためのものだ。
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ジムは寝る時以外はほとんど家に居なかった。
昼間は学校に行き、授業に出たり、教会仲間と会ったり、
図書館で宿題をやったりする。
4時頃帰って来ると、牛のレバーをフライパンで炒めて食べたり、
好物のチェダー・チーズの大きな塊から一片を切り取って齧ったりしてから、
どこかの会社の夜警の仕事に、例の黒のベレー帽を被り、
革のジャンパーを羽織って出かける。
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彼は本を読むのが大好きだ。
彼の車の後部座席には、タイプライターや彼の匂いのしみ込んだキルトの布団と共に
何冊かの本がいつも積み込んであって、
そこから1冊抜き出して、たいがい一晩で読んでしまう。
「モダーン・ライブラリー」の『戦争と平和』や『カラマーゾフの兄弟』は二晩で読んだ。
三浦清宏『カリフォルニアの歌』