20年前に英国から来た貧しい少女が、
ニューヨークでウェイトレスをしながら美術学校に通い、
デザイナーになろうとしてオートクチュールの店で働き、
ニューヨーク大学で法律を学んでいた学生と出合って、結婚し、
数年後に夫を交通事故で失い、娘1人を育てて生きてきた、というようなことだ。
それを聞くと、1人の女がアメリカ人になってゆく過程がよくわかる気がした。
彼女だけではない。
何万、何百万の女が、みなそうやって苦労しながらアメリカ人になっていったのだと思った。
彼女はアメリカを信じている。
アメリカだから、そうやって困難に堪え、希望を持ち、未来を信じて生きてゆくことが可能だったと思っている。
そのためにこそ、故郷を捨ててアメリカへ来たのだ、だから試練も引受けよう、
きっとそれは報いられる、という信念のようなものをぼくは感じた。
三浦清宏「カリフォルニアの歌」