とうさんがもどると、
ちょうどかあさんがオーブンからパンを出すところだった。
キャリーとグレイスが走って迎えに出て、いっしょに家に入ってきた。
メアリは静かに編み物をしていたけれど、ローラはすばやく立ち上がった。
「チャールズ、どうかしたんですか?」
いいにおいのするパンを、天パンからきれいな白い布巾にすべりうつしながら、
かあさんがたずねる。
「お帰りが早いので」
「べつに心配することはない。ほら、砂糖と紅茶と塩漬け豚肉だ。
今日はウサギがとれなかった。だが、心配することはないよ」
とうさんは繰り返した。
「しかし、できるだけ早く町へ引っ越すことにしたよ。
まず、家畜のために干し草を運んでこなくちゃならん。
いそげば、暗くなるまえに、一山運べるな」
ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」