33 クリスマスのたる

次の日、また汽車がきた。
ピイーッと汽笛を鳴らして、
汽車が出ていき、音が聞こえなくなってから、とうさんとボーストさんが通りをもどってきた。
2人で大きなたるをかかえている。
戸口が狭いので、たるをたててやっと通し、
それを居間の中央にでんとおいた。

「クリスマスのたるがきたぞ!」と、とうさんがかあさんに声をかけた。
そして、かなづちを持ってくると、ふたにうちつけてある釘をひきぬき始めた。
みんなはまわりをとり囲んで何が出て来るのか、かたずをのんで、見つめていた。
やっと、とうさんがふたをとりはずした。
そして、中身をおおっている茶色の分厚い紙を持ち上げてどかした。

いちばん上は洋服だ。
まず、とうさんは、上等の紺色のネル地でできた、見事な美しいドレスを持ち上げた。
スカートにはひだがたっぷりよっていて、
クジラの骨が入ったおしゃれな胴着には、胸のところに磨いた鋼鉄のボタンがずらりとついていた。

「キャロライン、これはおまえにぴったりだ」とうさんはいかもうれしそうだ。
「さあ、お取り!」
そして、またたるに手をのばした。
次にとりだしたのは、ふわふわした、空色のスカーフで、それはメアリのものとなった。
暖かいネルの下着もある。
黒い皮靴は、ローラの足にぴったりだった。
機械編みの白いウールの長靴下が5足出てきた。
手編みのよりも、ずっときれいで、薄手だ。

それから、暖かい褐色のコートが出てきた。
キャリーには少し大きかったけれど、
今度の冬にはちょうどよくなるだろう。
それにあわせた赤いフードとミトンも出てきた。
次にとりだしたのは、絹のショールだった!

「わあ、メアリ!」
思わずローラが声をあげた。
「絹のとびきりきれいなショールよ。
ハト羽色でね、緑とバラ色と黒の細かい縞があって、
その色がぜんぶ豪勢にまじった、深みのある色合いのふさがついているの。
さわって見て。
やわらかくて、なめらかで、どっしりした絹の手触りよ」
ローラはショールの端をメアリの手にのせてやった。
「ああ、すてき!」
メアリはため息をついた。
「これはだれにいくのかな?」とうさんがいったとたん、みんなが答えた。
「かあさん!」
こんなに美しいショールをはおるのは、かあさん以外に考えられない。
とうさんはそれをかあさんの腕にかけた。
ほんとうにかあさんにぴったりのショールだった。
つややかな、明るい色がたくさん入った、やわらかくて、それでいてしっかりした、持ちのいい品だ。

「みんなでかわるがわる使いましょうよ」と、かあさんがいう。
「メアリが大学に行くときには、持っていってもらいましょう」
「ねえ、とうさんには何があるの?」
ローラがうらやむようにたずねた。
とうさんには、きれいな白いシャツが2枚と、こげ茶色のフラシ天(けばの長いビロード)の帽子があった。

「これだけじゃないぞ!」
そういうと、とうさんはさらに1、2枚のかわいいドレスをとりだした。
1枚は青いネルで、もう1枚は緑とバラ色の格子縞のラシャだった。
キャリーには小さすぎ、グレイスには大きすぎた。
でも、グレイスはいずれ大きくなって着られるだろう。

それから、布地に字を書いたABCの本もあった。
小さな、つやつやしたマザーグースの本もあった。
紙はなめらかで、表紙はカラーの絵だ。

あざやかな色の毛糸がいっぱい入ったボール紙の箱があり、
もうひとつには、刺繍用の絹糸と、穴がいっぱいあいた、
銀色と金色の薄い台紙が何枚も入っていた。
かあさんはそれをふたつともローラに渡していった。
「あんたはせっかく作ったきれいなものをあげてしまったものね。
今度はこのすてきな材料を使って、いろいろ作ってちょうだい」

ローラはあんまりうれしくて、口がきけなかった。
その繊細な絹糸は、干し草をよって荒れてしまった指にひっかかる。
でも、美しい色合いは、まるで音楽を奏でているようで、
ローラの指もそのうちにまたすべすべになれば、そのきれいな、
うすい金銀の台紙に、刺繍ができるようになるだろう。

「さてと、いったいこれはなんだろうね」
たるのいちばん底からとうさんがひっぱりだしたのは、
何かかさばる、ごつごつした包みで、分厚い茶色の紙でぐるぐる巻きにされていた。
「ひゃあ、こいつはたまげた!」
とうさんが大声をあげた。
「クリスマスの七面鳥じゃないか、まだこちこちに凍っているぞ!」
とうさんはその大きな七面鳥を高くかかげて、みんなに見せた。
「それに、よく肉がついている!
こりゃ7キロはぜったいにあるぞ」

茶色の包みをはがして、床に落とすと、
中からクランベリーがいくつかころがりおちた。
「やや、つけあわせのクランベリーまでついているとはな!」
キャリーがキャーッと歓声をあげた。
メアリは両手を握りしめて、いった。
「ああ、すてき!」
でも、かあさんはとうさんにたずねた。
「ところで、食料品は店に入ったんですか、チャールズ?」
「ああ、砂糖、小麦粉、ドライ・フルーツ、肉、そりゃ、
ほしいものはなんでもそろっているよ」
と、とうさんが答えた。

「まあ、それなら、ボーストさん、あさって、ぜひ奥さんをお連れくださいな。
できるだけ早くいらしてください。
クリスマスのごちそうで、春をお祝いしましょう!」
「そいつはいい!」
とうさんが叫んだ。
ボーストさんはのけぞって大笑いし、部屋じゅうにその声が響きわたった。
みんなも一斉に笑い出した。
ボーストさんが笑うと、だれもがつられて笑ってしまうのだ。
「もちろん、きますよ!ぜったいにきますよ!」
ボーストさんはうれしさをかくきれない様子だ。
「5月のクリスマスか! すばらしい。
まるで断食していたようなひどい冬のあとで、ごちそうが食べられるとはね。
さっそく家にもどって、エリーにいおう」

ワイルダー 谷口由美子訳「長い冬」
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by foodscene | 2009-12-12 18:46 | アメリカ


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