作家以前 から

杉田さんは、天気が、店でのメニューの出方と関連があることにも気付いた。
雨の前はスタミナのつく物(焼肉定食など)がよく出て、
晴れの前は、野菜類や塩分の多い物(野菜いためやタンメン)の注文が多いという。
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子供のころから私は、このお茶の時間が楽しみだった。
私の家では、午前と午後の2回で、ときにはコーヒーや紅茶、ココア、
そして洋菓子が並ぶ。
そんなときはテーブルの上の色合いが目に鮮やかで何だか嬉しかった。

まだ、友だちの家でも手作りのお饅頭をいただきながら、
その家の方とお話しする。
人見知りする子だったから、恥ずかしくもあったが、やはり楽しい思い出だ。

と言っても、子供の脳細胞にカフェインが悪影響を与えると母が言い張り、
中学に上がるまでコーヒーも禁止され、薄い緑茶しか飲ませてもらえなかった。

ただしミルクをたっぷりいれた紅茶だけは例外だった。
来客時やおいしい洋菓子があるときは、
母が熱い紅茶を入れてくれた。
当時はティーバッグだったが、甘いミルク・ティーの味は、ほんわかした湯気と楽しいおしゃべりがあった
幼い日のお茶の時間を思い出す。
***

私はリプトンの青缶やアールグレイの缶を買い、
家族が寝静まった夜更け、受験勉強のあいまに1人でいれた。
台所の時計はすでに午前を指していて、静まり返った深夜のお茶の味は忘れられない。

1人暮しを始めたとき、紅茶用ポット、ミルクピッチャー、シュガーポットなどをそろえた。
まだ学生だったから、ウェッジウッドなどの外国製品は買えず、
国産のボーンチャイナ。
流れるような花模様が気に入って、茶渋をこまめに落とし、いつもぴかぴかにして、
もう何年も使っている。

そういえば大学生のころ、紅茶にうるさいボーイフレンドがいて、
いつも砂時計で抽出時間を計ったりして丁寧にいれたお茶を飲ませてくれた。
しかし茶飲み友だちとはよく言ったもので、
車を飛ばして会いに行っても、紅茶ばかり飲んでいて手すらつながなかった。

当時はオーブントースターしか持っていなかったのに、
紅茶に添えるスコーンを焼いた。
材料は小麦粉と膨らし粉とミルクなどの簡単な菓子だが、焼き上がると
部屋中にバターの甘い香りが漂って、幸せな気分だった。

私は料理が好きだが、一番得意なのが、緑茶や紅茶を入れること(料理のうちに入らないか)、
でも皆がおいしいと言ってくれる。

松本侑子「作家以前」
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by foodscene | 2009-12-28 11:08 | ノンフィクション日本


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