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夜のラーメンはなぜうまい。

「あら敏、帰ってたの?」
「うん」
「菓子パン買ってきてあるけど」
「それよりラーメンがいいな」
「作ったげようか」
「うん」

 麺類の好きな敏は、帰って来ると一人で黙々とインスタント・ラーメンを作って食べる習慣があり、そして父親も母親も夕食には間にあわないことが多いので、どちらかとまたラーメンを夜食にするなどということになったりする。

「煮えくり返ってるよ、ママ」
 敏に注意されて昭子は我に返った。
「ラーメンぐらい自分でやれるでしょ」
「作るって言ったのはママだよ」
 昭子と敏の口喧嘩は親密さを確かめあう挨拶のようなもので、やがて間もなく生卵が2つとハムが2切れのった豪華なラーメンが出来上って、敏は丼に顔を突込むようにして掻きこみながら、
「ねえママ、やっぱりママの作るのは一味違うね。お母さんの味です、へ、へ、コマーシャル」
などと、お世辞を言った。

(有吉佐和子著 「恍惚の人」より)
by foodscene | 2006-04-06 01:01 | 日本


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