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残月

「それにね、たまには私も居酒屋メニューが食べたくなる。
揚げ出し豆腐とかだし巻き玉子とか」
「本当に?」
「鯵の塩焼きも」

もちろん本当というわけではないが、
嘘でもなかった。

子供の頃、諒子の家は貧しかった。
母一人の手で育てられ、母は諒子を食べさせるために
朝から晩まで働いた。

唯一の贅沢と言えば、月に一度、
近所の居酒屋で食事をすることだった。
枝豆、鶏のからあげ、サイコロステーキ。
それが何よりの楽しみだった。

唯川恵「残月」
by foodscene | 2012-02-21 05:34 | 日本


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