もう1冊、大学1年のジョブズに大きな影響―大きすぎる影響かもしれない―を与えた本がある。
フランシス・ムア・ラッペの『小さな惑星の緑の食卓ー現代人のライフ・スタイルを変える新食物読本』だ。 この本では、菜食主義が個人にも地球にも大きなメリットをもたらすと絶賛されていた。 「あのとき以来、僕は肉をほとんど口にしなくなった」だけでなく、 この本に影響され、浄化や断食、あるいはにんじんやリンゴなど、1~2種類の食べ物のみで 何週間も過ごすといった極端な食事をすることが増えていった。 ジョブズもコトケも、1年生のときにベジタリアンとなった。 「スティーブのほうが本気で取り組んでいました。 ローマンミール社の自然食系シリアルで暮らしていましたから」 ふたりは農協で、1週間分のシリアルや健康食品などを買い込んだ。 「スティーブはナツメヤシやアーモンドを箱で買っていました。 ジューサーを持っていたので、にんじんも大量に仕入れてジュースにしたり、 サラダにしたりして食べていました。 にんじんの食べすぎでスティーブの肌がオレンジ色になったという話がありますが、 ある程度は本当なのです」 20世紀初頭、栄養学の普及を熱狂的に推進したアーノルド・エーレットの 『無粘液食餌療法』を読んで、 ジョブズはますます極端な食事をするようになってゆく。 果物と、デンプンを含まない野菜しか食べないのが最善、 そうすれば有害な粘液ができないと信じ込んだのだ。 また、長期にわたる断食をときどきおこない、 体内を浄化すべきだとも考えた。 つまり、ローマンミールのシリアルもだめなら、お米もパンも穀類も、 牛乳もだめなのだ。 友だちにも、ベーグルを食べると粘液ができて危ないぞと言いはじめる。 ウォルター・アイザックソン 井口耕二訳「スティーブ・ジョブズ」
by foodscene
| 2012-09-08 15:42
| ノンフィクション・アメリカ
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