ラティの数少ない友人がほかに1人2人来た。
出される食事は、たいがいが辛い魚料理とゆでたユッカの根っことパラパラの御飯。 デスクに広げた食事を囲んで、私たちはよく文学について語った。 世界のユダヤ人の総人口の約半分がアメリカに住み、さらにその3分の1がニューヨークに住む。 当然、ユダヤ文化の影響は大きかった。 ニューヨークの朝食は、コーヒーにクリームチーズを塗ったベーゲル。 ユダヤ菓子を売るお菓子屋や清浄食(コウシャ)のレストランもあちこちにあったし、スーパー・マーケットにもユダヤのパン、マツォやハラーが並んでいた。 ウィリアムの誕生日を祝して、彼の好物の小エビのクリームソースのかかったアヴォカドのオードヴルが出ると、義兄のアンソニーが彼の上司について語り始めた。 何でも上司は、医学博士号に法学博士号、そのうえ哲学博士号まで持つ超人なんだそうだ。 弁護士になったウィリアムの招待してくれた彼の弁護士事務所のパーティーは、エレガントな船上パーティー。貸し切りの船がクルーズするなか、ランプの灯下で魚料理のディナー。 食後は別室に移って、ラズベリーにブルーベリー、スワン型のシュークリーム、それからプティ・フォアのデザート。 スーパーの棚には「『ほとんど』ホームメイドのクッキー」「お婆ちゃんのクッキー」といった商標が並ぶ。 「デイヴィッド」や「ミセス・フィールド」は、家で作るみたいに、オーヴンから取り出したばかりのあつあつクッキーを売って大いに成功している。 水で溶いて焼くだけというインスタントのケーキ・ミックスは、不評で生産中止になった。 卵を割り入れ、牛乳を加える、そんな手間をアメリカの消費者から奪い取るわけにはいかない。 さもなくば、 「あまりにホームメイドからかけ離れてしまう」から。 ドラッグストアにあれだけわんさと薬瓶が並び、そしてテレビであれだけ派手に宣伝が流れて、アスピリン漬けになったアメリカ人はそれでも言う。 「やっぱり、風邪を引いたときには、お婆ちゃんのチキン・スープがいちばん」 (天羽君子著 「アメリカン・ドリームの光と影」より)
by foodscene
| 2006-05-21 04:21
| ノンフィクション・アメリカ
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