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シルバー湖のほとりで ボーストのおくさん

それからローラは包み紙をあつめ、母さんをてつだってテーブルのしたくをした。

金色にこんがり焼けたひきわりとうもろこしのマッシュの大皿、ホットビスケットの皿、
いためじゃがいもの皿、たらのグレービーの深皿に、干しりんごのソースをたっぷり入れたガラスばち……と、母さんは、つぎつぎにテーブルにならべた。

「すみませんねえ、バターがなくって」母さんはいった。
「牝牛がほとんどミルクをださなくなったので、もうバターがつくれないんですよ」

でも、マッシュやいためたじゃがいもにたらのグレービーをかけると、とてもおしいかったし、
干しりんごのソースをつけたホットビスケットは、とびきりの味だった。

こんな朝ごはんは、年に1回、クリスマスのときにしか食べられない。
おまけにもう1回、おなじ日にクリスマスの昼ごはんもくるのだ。

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ボーストのおくさんは、とってもおもしろい人だった。
なんにでも興味をもち、母さんみたいに家事のあれこれをうまくきりもりするにはどうしたらいいか、とても知りたがっていた。

「サワーミルクをこしらえるだけのミルクもないっていうのに、どうやってあんなにおいしいビスケ ットをこしらえたの、ローラ?」
おくさんはたずねた。
「あら、サワードウを使っただけよ」
でも、ボーストのおくさんは、いままでサワードウのビスケットなんてつくったことがない、という。ビスケットのつくり方を教えてあげるのは、おもしろかった。

ローラはカップでサワードウをはかり、それに重曹と塩と粉を入れてつくったたねを板の上にのせ、めん棒でのばした。

「でも、サワードウはどうやってつくるの?」
ボーストのおくさんはたずねた。

「まず、こうしてね」と、母さんは教えてあげる。
「つぼの中に粉を少し、それからぬるま湯を入れて、すっぱくなるまでねかせておくんですよ」
「それで、使ったら、かならず少しだけのこしとくの」ローラも説明した。
「ほら、ビスケットのたねのくずも、こうやってつぼに入れて、お湯ももう少したして・・・・・・」
ローラは、ぬるま湯を少したした。
「それから、ふたをして・・・・・・」
きれいなふきんをかぶせ、皿でふたをする。

「そしたら、あたたかい場所においておくの」
ストーブの横の棚に、つぼをおいた。
「こうすれば、いつでも使いたいときに使えるでしょ」
「こんなにおいしいビスケットは、いただいたことがないわ」
ボーストのおくさんはいった。


(ローラ・インガルス・ワイルダー著 こだまともこ、渡辺南都子訳 
 「シルバー湖のほとりで」より)
by foodscene | 2007-02-18 21:54 | ノンフィクション・アメリカ


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