翌朝仕事に出かけるネイサンと一緒にアパートを出て
(自分が翌朝仕事に出かける必要のないサバティカルというのは、 実に素晴らしい)、 おいしくて有名だと教えられた近所のベイカリーに寄ってスコーンとコーヒーを買い、 ゆっくり食べながら次の地下鉄の駅まで歩いた。 スコーンは本当においしかった。 料理好きな人のお店の評価はなるほど信頼できる。 週末、ネイサンのアパートで一夜を過ごしたあと、 本格的なコーヒーの匂いがキッチンのあたりからしてくるので目を覚ますと、 「この本に出てるものならなんでも作ってあげるから、 どれか好きなのを選んで」と、 朝食メニューのレシピを出してくれる。 「じゃあこれ」と言って、「レモン・ヨーグルト・マフィン」を選ぶと、 「よしきた」と言って、私がシャワーを浴びているあいだに、 アパートの下にあるスーパーに材料を買いに行き、 私が着替えたり髪を乾かしたりしているあいだにてきぱきと、 香ばしいマフィンを焼いてくれた。 以前付き合った男性で、フレンチトーストやオムレツくらいなら 作ってくれた人もいたが、マフィンを焼いてくれる男性はさすがに初めてだった。 夜にはマンハッタンで一番おいしいという肉屋で買ってきた柔らかいステーキ肉を焼き、 マッシュドポテトというものがこんなにおいしいものだとは知らなかったと思うような マッシュドポテトと、野菜のソテーを、 これまたあっという間に作ってくれたこともあった。 ポーク・チョップだの白身魚のムニエルだのクレーム・ブリュレだの、 短いデート期間にいろいろな料理を彼のアパートで味わい、 実に贅沢な思いをした。 (吉原真里著「ドット・コム・ラヴァーズ」より)
by foodscene
| 2008-08-12 23:47
| ノンフィクション・アメリカ
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